共同研究プロジェクト 課題B

水生植物と根圏微生物の相互作用による富栄養化湖沼のファイトレメディエーション

研究代表者 雨宮 隆

【背景と概要】窒素やリン等の栄養塩類の流入によって起こる湖沼の富栄養化は,国内外で大きな生態環境問題となっている.本研究は,相模湖や津久井湖で毎年夏期に大量発生する藍藻類ミクロキスティス属の除去に基づく湖沼の環境修復を目的として,植物と微生物の生物間相互作用を利用した新規で効率的なファイトレメディエーション(植物を用いた環境修復)の方法論をマイクロコズム実験によって明らかにした.

【研究成果】野外から採取し培養したウキクサ(Spirodela polyrhiza)とアオコの一種である藍藻類(Microcystis aeruginosa)を,窒素とリンの濃度を調整した大学構内の池水に加え,連続培養条件下においてアオコ細胞数の経日変化を測定した.ウキクサの根乾燥重量1 mg当たりの細菌数をもとに実験データを解析すると,根圏細菌がアオコの細胞数の約60 倍以上存在すると,アオコの増殖に対して十分な抑制効果が得られることが分かった.

次に,ウキクサが合成するフラボノイド化合物が根圏細菌を活性化したと考えられたので,アオコの増殖抑制効果が得られたウキクサについて,フラボノイド化合物の合成に関わるカルコンシンターザ遺伝子の発現解析を行うと,対照系と比べてその発現量が大きく上昇していた.

海洋地殻マントルの実体を探る:オマーンオフィオライト構成岩石の地震波速度測定

研究代表者 石川正弘

岩石・鉱物の詳細な弾性波速度データに基づいて海洋地殻マントルの岩石学的構造モデルを構築することが期待されている。本研究では、まず、ピストン・シリンダー型高圧発生装置を用い、海洋地殻マントルの温度圧力条件下(最大1000MPa、最高450℃)で弾性波速度測定を行うシステムを開発した。つぎに、過去の海洋地殻マントルが大規模に地表に露出しているオマーンにおいて採取された岩石試料を用いてP 波速度(Vp)とS 波速度(Vs)を測定した。ハンレイ岩の測定例を紹介する。圧力を1000MPa まで変化させたとき、Vp とVs は400MPa まで急激に増大し、より高圧側では線形に上昇した。1000MPa でのVp とVs はそれぞれ7.13km/s、3.88km/s である。400MPa ~ 1000MPa のプロットを直線回帰し、直線領域をP = 200MPa に外挿した値(Vp=6.94Km/s、Vs=3.82km/s)は200MPa での実測値(Vp=6.51Km/s、Vs=3.65km/s)に比べて大きい。これは空隙による影響であり、0.2GPaでの空隙率は0.06%と見積もられた。したがって本研究では、海洋地殻マントルの実体を探るために、岩石の空隙フリー状態での弾性波速度値を決定した。

自然物画像の質感情報認識システムの開発

研究代表者 岡嶋克典

野菜や肉等の自然食品を見ればその鮮度を瞬時に判断できることから、ヒトには高度な質感認識メカニズムが備わっており、食品業界においては、鮮度判定等の自動化が望まれている。これらの問題の解決には、人間の視覚特性を考慮した質感研究に対するトップダウン的アプローチが必要不可欠である。そこで本研究では、実物の写真画像を素材として用い、画像処理技術を駆使することで、実物の写真に含まれているどのような情報が人の感じる本物らしさや質感認識に寄与しているのかを定量的に解析し、質感認識の脳内メカニズムの解明とその特性を考慮した質感認識システムの開発を試みた。具体的には、視覚刺激を制御するために、自然物の撮影画像に対して様々なフィルタリング処理やヒストグラム変換を施した画像刺激を作成し、評価実験を行うとともに、画像解析を並行して行なった。その結果、ヒトが画像情報から食品の鮮度を精度よく評価できることを示すとともに、高次質感認識過程のアルゴリズムを定式化した。また、このアルゴリズムを画像認識ソフトウェアに組み込むことで鮮度判定等の自動化を実現できることを示すとともに、画像の質感(鮮度や加齢度)を任意に制御できる新しい画像処理技術を開発した。

小笠原の生態系機能における外来木本種アカギの生態リスク評価

研究代表者 酒井 暁子

侵略的外来植物の生態系における影響の予測には、侵入植物の機能的性質、つまり光合成や被食防衛・落葉分解に関わる性質が、侵入先の生態系においてどのような特徴を持つかを明らかにする必要がある。そこで、小笠原諸島で現在非常に広がっている外来木本種アカギ(沖縄原産)に注目し、その葉の機能的性質が、小笠原の植物相においてどのような特徴を持っているかを調査した。

小笠原の植物相からアカギを含む20 ~ 30 樹種の葉を採取し、葉のLMA( 面積あたりの乾重量)、窒素濃度、フェノール性物質濃度を種毎に測定した。その結果、光合成速度に関わるとされるLMA や窒素濃度においては、植物相の平均値とアカギの値は殆ど変わらなかった。一方、被食防衛や落葉分解抑制に関わるとされるフェノール性物質濃度に関しては、アカギは植物相の中で非常に高い値を持っていた。

しかも、原産地である沖縄のアカギに比べ、倍近い濃度を示した。一般に、外来植物は侵入先で防衛機構を失う(フェノールが低くなる)とされるが、今回の結果は逆の傾向を示している。更に詳細な研究が必要であるが、アカギは高フェノールによる分解抑制を介して、生態系の栄養塩循環に大きな影響を与える可能性が示唆された。

ライフサイクル思考に基づく環境教育プログラムの開発とその検証

研究代表者 本藤祐樹

現在の環境問題は,生産側の技術開発や社会の制度改革のみならず,消費側の意識改革が求められる.そのために環境教育は重要なツールとなるが,その内容は自然保護を中心にごみ・エネルギー問題が多くを占め,今求められる高度技術社会や地球環境問題に重点をおいたものは少ない.本研究の目的は,「身近な日常生活」「地球環境問題」そして「科学技術」という3 者の相互依存関係に着目した,「ライフサイクル思考」に基づく新たな環境教育プログラムを創出することである.

H20 年度は,H19 年度から引き続き,下記3 種の教材開発を実施した:(1) 生徒達の所持品のライフサイクルにわたる環境影響を自ら分析・評価させるLCA ソフトウエアと補助教材,(2) 携帯電話の生産段階に着目し,そこでの重要な技術要素であるプラスチックと半導体の基礎を学ぶ教材,(3) ライフサイクルの視点に立ち国レベルでのエネルギー問題を概数的に把握するための教材.これらの教材を用いた環境教育プログラムを神奈川県および東京都の高校などで試行し,その効果を質問紙調査に基づき分析することで,ライフサイクル思考に基づく環境教育プログラムの有効性を明らかにした.


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