共同研究プロジェクト 課題A

Atom Economy 100%の[4+2]環化付加反応を基盤とする生物活性・機能性化合物の創製に関する研究

研究代表者 井上誠一

[4+2] 環化付加反応は原料に含まれる全ての原子が生成物に移行する反応であり、六員環骨格を効率よく構築できる。この反応を基盤として、生命環境や生物環境にとって有用な新規化合物を創製する。具体的には (1) 含窒素生物活性化合物創製のためのイソインドールとジエノフィルとの反応、(2) 抗生物質actinobolyn 合成のための分子内環化付加反応、(3) (5) (6) 生物活性化合物及び機能性色素創製のためのオルトキノンメチドの分子内及び分子間環化付加反応、(4) 含窒素生物活性化合物創製のためのニトロソ化合物の環化付加反応、等を開発し応用した。

籾殻からの金属ケイ素の省エネルギー的製造

研究代表者 奥谷 猛

シリコン太陽電池は地球温暖化防止のためのエネルギーの切り札として期待されている。シリコン太陽電池の原料はケイ石(SiO2) を電気精錬することにより得られる金属シリコンである。地殻にはシリコンが酸素に次いで多く含まれ、資源的には無尽蔵と考えられているが、金属シリコンを製造するための高純度ケイ石の資源量は多くなく、局在している。籾殻の約20wt%は活性なシリカ(SiO2) が含まれ、毎年稲作により生産され、その量は年間の世界の太陽電池などの半導体製造に必要なシリコンの8 倍以上のシリカが日本で毎年生産されている。本研究では、籾殻に含まれている活性なシリカから金属シリコンを省エネルギー的に製造する方法について検討した。電気精錬であるエルケム法では、シリカと炭素の混合物をアーク炉中で還元して金属を製造する方法であるが、籾殻シリカが活性であるために1100℃以上の温度でSiO が生成し、SiO は気相であるので、反応域から排出されてしまい、SiO2+2C → Si+2CO の反応は生じず、金属シリコンは得られなかった。籾殻シリカにアルミニウムを混合し、これを1100℃以上に加熱するとテルミット反応(3SiO2+2Al → 3Si+Al2O3) が起こり、1300℃ 20 分でSiO2 の70%以上が金属シリコンに変換した。鉱物由来のシリカよりも転換率が高く、反応速度も大きかった。

エネルギー消費と水質指標に基づく水処理プロセスの評価と水リサイクルシステムの設計手法

研究代表者 藤江幸一

当研究プロジェクトでは水資源が不足する地域に対してエネルギー消費を抑えながら安全な水の供給を可能にする階層的水リサイクルの実現に向けて、下排水処理におけるエネルギー消費の削減と放流水の安全性試験について、それぞれに方策を確立提案することを目的としてきた。

前者については、1)下水処理場を対象に汚泥処理方法の違いが、下水処理場自体に加えて県内全体でのエネルギー消費と二酸化炭素排出に及ぼす影響について現場での調査・解析を行い、汚泥焼却に代えてコンポスト化の導入が総合的にエネルギー消費と二酸化炭素排出削減に効果的であること示した。加えて、2)気液下向並流塔による酸素溶解が酸素要求の高い下排水処理での利用に適していることを示した。

後者では、下水処理水および非点源の放流水について、umu 遺伝毒性による水汚染の現状把握と並行して、生態毒性物質のGC/MS による一斉分析法の確立に挑戦してきた。一部の下水処理水では、戸別浄化槽放流水や農業用水路流水よりも高い遺伝毒性が確認され、処理対象区域の特性や流入下水の解析の必要性が判明した。前記した排水処理の省エネルギー化手法と一体化して、持続可能社会実現に資する水資源リサイクルシステム設計手法の確立を実現する。

持続可能な再生骨材リサイクルシステムの構築

研究代表者 細田 暁

本研究では,持続可能な循環型社会の形成に資するため,再生骨材を使用するときの最大のボトルネックとなる可能性のあるアルカリ骨材反応を抑制できる高炉セメントの使用を前提とした,再生骨材のリサイクルシステムを構築するための研究を行い,以下の成果を得た。

  1. 高炉セメントを用いる際に,最大の問題となるひび割れ抵抗性の低下を,軽量細骨材により改善できることを示した。高温履歴を受ける高炉スラグコンクリートにおいて,粗骨材の周囲に発生する微細損傷によりひび割れ発生強度が低下することを明らかにした。
  2. 高温履歴を受ける高炉スラグコンクリートにおいて,骨材周囲に発生する微細亀裂の発生時期を,AE 法により捉える方法を見出した。今後,微細亀裂の発生機構をより詳細に検討できる。インク注入法により微細亀裂を視覚的に捉えることも可能となった。これらの手法を,今後,微細亀裂の抑制方法を研究していく際に活用できる。
  3. ヴァージン材の骨材を使用し,構造物の供用後に解体・廃棄する場合と,高炉セメントと再生骨材を組み合わせて,供用後に解体・再生骨材を再利用する場合とでの,LCCO2 の比較を行った。再生骨材を使用することでCO2 の排出を40%削減できる,との結果を示した。

パッシブ型サンプラーによる残留性有機汚染物質(POPs)の東アジア広域モニタリング

研究代表者 益永茂樹

東アジアのPOPs の汚染源と輸送挙動を解析するため、農環研、中国科学院広州地球化学研究所、韓国農業科学技術研究所と共同で、広域モニタリングを開始した。日本、中国、韓国とその周辺国の約100 箇所で同時に採取するため、パッシブ型の大気サンプラーを用いている。採取は季節ごとに行っているが、分析は作業量が多いため日本の1回目(採取期間:2008 年3 月21 日~ 5 月16 日)のみが終了したところである。日本の約50 地点の結果では、ポリ塩化ビフェニール(PCB)とポリ塩化ナフタレン(PCN)の総濃度は地点により大きな差が見られ、PCB が16 ~ 2,900 pm/m3、PCN が1.3 ~ 160 pg/m3 であり、それらの濃度の間には相関が見られた。また、全体として都市部の測定点の方が田舎の測定点より濃度が高い傾向が見られた。PCB とPCN の同族異性体組成は、多くの場所で類似の組成パタンを示したが、少数の特異的な組成を示す地点が存在し、採取地点の近傍に汚染源が存在した可能性が疑われた。今後、中国と韓国での測定結果と合わせて、東アジア地域のPOPs の大気中濃度分布を明らかにすると共に、バック・トラジェクトリー法や化合物指紋法などにより放出源の特定、あるいは、放出源地域から域外への移動量などの解析を進める予定である。

包括的産業災害リスクマネジメント科学フレームワークの創出

研究代表者 三宅 淳巳

産業災害によるリスクは,発生するエネルギーによる直接的被害,地域の社会基盤崩壊による物的・経済的損失,発災時から復旧に至るまでの長期に亘る情報不足による社会不安等,事業の安定かつ健全な継続計画を検討する際の不可欠な要因である。本研究プロジェクトでは,[1] 産業災害の発生要因解析,[2] 災害時の影響評価,[3] 人間行動特性に基づく避難計画検討,[4] リスクベース維持管理技術,[5] 地域社会とのリスクコミュニケーション,からなる企業の事業継続計画を含む,包括的な産業災害リスクマネジメント手法の検討と対策指針を構築することを目的とした調査研究を実施した。

その結果,危険物施設に関する発火爆発災害の統計データを基にした災害発生要因分析により発生抑制のための情報を得た。また,化学物質に由来する災害発生時の影響評価モデルの妥当性について検討し,次いで,公開されているソフトウエアの精度の検討により,それらの利用法に関する情報を得た。一方,企業や行政の保安担当者との意見交換により,産業災害に関連するリスクマネジメントならびにリスクコミュニケーションの現状と今後のあり方に関する情報を得,地域社会における企業の事業継続に資する基本的考え方について整理を行った。なお,産業施設の維持管理技術,災害発生時の避難計画ならびにそれらを組み込んだ包括的管理手法については,今後の課題となった。


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